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ABLとファクタリングを徹底比較!違いや特長をケース別に解説!

中小企業、事業の資金調達方法にはいくつかの種類があります。たとえばファクタリングやABLといった取引は、いずれも日本国外で普及していたところ、近年になって日本国内でも徐々に広がってきたものです。
今回は、比較的新しい資金調達方法である“ABL”について、ファクタリングとの違いやメリット・デメリットなどを解説いたします。

ABLはAsset Based Lendingの略で、事業の流動資産(動産、在庫、売掛債権など)を担保として融資を受ける資金調達方法です。
単に“資金調達のために流動資産を担保に入れる”というだけでなく、担保として金融機関に提供する資産(動産、在庫、売掛債権などの流動資産)に対して少しでも高い価値を持たせるために内部管理体制を整備することが求められるため、ABLを活用することで資産の管理状況が整えられ、事業のリスク管理体制が向上するという特徴があります。

ABLの仕組み

流動資産とは、1年以内(決算までの間)に現金化することができる資産のことです。
現金や貯金、証券、在庫、売掛債権などのほか、機械設備なども含まれます(不動産は固定資産ですので含まれません)。
ABL取引において、金融機関は事業者の流動資産を担保に融資を行います。担保とする流動資産が商品在庫になる場合は、例えば過去の販売実績から粗利益率などを算出して評価額を求め、これに基づいた額の融資が行われます。また、売掛債権を担保とする場合は、売掛先の信用力なども加味されて融資可能額が算出されます。
在庫や売掛債権は流動的なものなので、一般的に営業を行っていれば日々変動してしまいますが、ABLの担保には「質権」が設定されていないため、営業に差支えがありません。
ABLでは、質権の代わりに「譲渡担保」という形をとります。
これにより、譲渡担保した資産の所有権は金融機関に譲渡されるものの、在庫や売掛金などを営業のために利用することが可能となっているのです。たとえば担保とした商品在庫が販売されてなくなっても、事業が営業を続ける限りその商品の在庫は再び入庫されますので、担保としての効力はなくならないというわけです。
ただし、金融機関は、担保としている流動資産が著しく減少したり価値が下がったりしないか、月次ごとなどに担保の動向についてチェックを行います。事業者はこの時、金融機関に対し担保の状況を正確に報告する必要があります。

ABLのメリット

ABLのメリットとしては主に次の点が挙げられるでしょう。

不動産などの資産を持っていない会社でも、資金調達がしやすい!

一般的に、日本の中小企業において資金調達の主な方法は銀行からの融資または不動産担保融資などです。しかしあまりにも多くの企業が銀行融資に依存しているため金融機関からの貸出が期待できないケースも多くなっています。実際に、会社を設立してからまだ間がないなどの理由で銀行から融資を断られたり、過去に赤字決算があったため銀行の審査に通らなかったり…ということも珍しくありません。
ABLでは、事業が現実的に保有している流動資産を担保にすることができるので、その資産そのものに価値があればその価値に見合うだけの融資が受けやすくなっています。例えば、担保とした商品が非常に高度な技術で製造されているとか、売掛債権や預金の管理体制が非常によく整えられているといった場合はABLで融資を受けられる金額が上がる可能性もあります。

担保とする流動資産の管理が必要なため、必然的に内部体制が整えられる!

ABLを行う金融機関にとっては、担保の価値が融資の可否や金額に直結していますので、事業者の管理体制や担保の市場価値については極めて慎重にチェックされます。市場価値が高い商品の在庫を担保とする場合、事業者は内部体制を整えてしっかりと管理すれば資産の価値をわかりやすく金融機関に提示することができます。また、融資を受けた後は月次ごとなどに金融機関からのチェックが入りますので、これに対応することで必然的に内部管理体制が整備されます。

担保にした資産を使って営業できるため、中・長期的な利用が可能!

商品在庫を担保としていても一定の範囲内であれば販売・仕入することができるので、事業者は担保にした在庫を使って営業を続けることができます。定められた範囲を超えずに販売・仕入ができるうちはその商品在庫を担保にし続けることができるため、同じ資産を使って中・長期的な融資を受けることが可能なのです。

融資を受けた金融機関と信頼関係を構築しやすい!

会社設立後間もない事業者は、なかなか金融機関との関係を構築しにくいのが現状です。しかし、ABLであれば融資を受けやすく、かつ融資を受けた後も金融機関と定期的にやり取りを行う必要があるので、新しい事業者であっても金融機関との信頼関係を構築しやすくなっています。
事業者は、定期的に担保としている流動資産の価値や管理体制を金融機関に報告しチェックを受けますが、このとき評価が高ければより一層信頼関係が深まりやすいと言えるでしょう。

以上のようにABLという資金調達方法には、借りやすく、管理しやすく(管理能力が向上しやすく)、続けやすいというメリットがあるのです。自社の経営状態が改善、またはより向上していくという効果が得られるでしょう。

ABLデメリット(注意点)

ABLのデメリットとしては主に次の点が挙げられます。

過剰担保のリスクがある

担保となる商品の市場価値は、事業者ではなく金融機関の審査によって評価されます。事業者側の内部管理体制が整っていれば、金融機関の審査でより良い(高額な)評価をつけてもらえる可能性はありますが、あくまでも金融機関の判断にゆだねられます。また、金融機関によっては評価額が異なることもあるようです。
そのため、必要以上に担保をとられてしまう“過剰担保”のリスクが存在します。

定期的な報告を義務付けられることで、手間や管理体制の整備が必要になる

ABLを利用した場合、月次などで定期的に金融機関とやり取りをする必要があります。事業者は、担保である流動資産(在庫や売掛金)の状態を正確に把握して、金融機関に報告しなければなりません。管理体制が整備されていないと大変な手間がかかるでしょう。
これは“金融機関への報告のために管理体制を見直したことで事業の経営状態を把握することができるようになる”というメリットでもありますが、管理体制の整備や定期的なチェックには手間や時間がかかることは否めません。
事業者によってはABLでは必須の“定期的な報告”が多大な負担に感じられることもあるでしょう。

倒産のリスクがある

ABLは融資ですので、期日までに金融機関へ返済する必要があります。もしも返済が遅れたり、返済できなくなってしまったりすると、金融機関から担保権を実行されることになります。担保に入れていたものをすべて金融機関に取られてしまいますので、最悪の場合倒産に追い込まれる可能性があります。

即日~1週間などの急な資金調達はできない

ABLは、審査などの手続きのためにある程度時間がかかります。数週間~1か月後にならないと融資の入金がないということもありえます。

ABLとよく比較されるのがファクタリングという取引です。
どちらも中小企業の資金調達方法として、日本国外で普及していたものが近年になって日本国内で徐々に浸透し始めた取引になります。両取引における大きな違いは次のとおりです。

ABLとファクタリングの大きな違い

対象となる資産

ABLは、利用者の保有する売掛金や商品在庫、預貯金など色々な流動資産が担保の対象となります。
ファクタリングは、利用者の保有する売掛金のみが対象です。利用者は、対象とする売掛金をファクタリング会社に売却(債権譲渡)することで資金を調達します。

契約内容

ABLは、資産を担保とする融資です。利用者は、後に借りたお金を金融機関に返済します。
ファクタリングは、売掛金(売掛債権)の売却(債権譲渡)です。利用者または売掛先は、期日に発生する代金を、後にファクタリング会社に支払います。
※ABLは貸金業ですが、ファクタリング会社は貸金業ではありません。

審査対象

ABLは、利用者の保有する担保について審査します。利用者が審査対象となります。
ファクタリングは、売掛債権の売却なので、売掛先が確実に代金を支払うかどうかが重要なポイントとなります。よって、ファクタリングの場合の審査対象は、利用者ではなく売掛先です。

入金スピード

ABLは、審査などの手続きに時間がかかるため、入金に数週間以上かかります。
ファクタリングはいくつかの種類があるのですが、内容によっては即日の入金が可能な場合もあります。

ABL取引が向いているのは次のようなケースです。

  • 税金や社会保険の滞納を解消して、また金融機関から融資を受けたい
  • 急成長中のため、たくさんの在庫や売掛債権がある
  • 仕入から販売までのタイムラグが大きく、必然的に抱える在庫が多い
  • スタートアップ企業で銀行からの融資が下りづらいが、金融機関から融資を受けたい
  • 通常の融資が下りづらい小規模や新規の事業者、また、一時的に税金などの滞納がある事業者の場合でも、ABLなら担保とする流動資産があれば融資を受けることが可能です。ひとまず審査がおりやすいABLで融資を受け、税金の滞納を解消したり、事業を拡大したりしてからABLに返済を済ませると、改めて金融機関で無担保融資を受けることができるというケースもあります。
    また、担保となる流動資産が常にたくさんある(販売まで期間が長いため在庫を抱えやすい)という事業者にとっては、ABLは利用しやすい取引と言えるでしょう。

    一方、担保にできる流動資産がほぼ売掛債権のみで、しかも急な資金繰りに対応してほしい…というケースでは、ABLではなくファクタリング取引を検討していただくのがおすすめです。

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