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人材派遣業のファクタリング利用方法と問題点、活用ケースをご紹介

中小企業における資金調達の一手段として、売掛債権(売掛金)を売却・債権譲渡することでスピーディに現金を得る「ファクタリング」が様々な業種で広まっています。ファクタリングは企業間取引の売掛金を対象とする取引ですので、企業間の信用取引が多発する業種で特に活用されています。中でも人材派遣会社とは相性がいいといわれることがあるようです。似たようなお金の動き方をする企業にとっては、人材派遣業でのファクタリングの活用方法が参考になるのではないでしょうか。
今回は、人材派遣業でファクタリングが好まれる理由と問題点、活用した方がいいケースをご紹介します。

資金調達の一手段となる買取り型ファクタリングには、2通りの取引方法があります。それぞれの取引内容から「2社間取引(2社間ファクタリング)」と「3社間取引(3社間ファクタリング)」と呼ばれており、それぞれメリット・デメリットがあるため、自社に合う取引を選ぶようにしてください。

【メリット】売掛金の支払期日より早く現金が手に入る

2社間取引では最短で申し込みの即日~数日、3社間取引でも概ね1~2週間ほどで入金されます。使途は制限されませんので、納税や一時的な支払などに利用できます。

【メリット】2社間取引であれば売掛先に知られない

3社間取引では売掛先に書類を提出してもらう必要がありますが、2社間取引の場合は売掛先に承諾を得る必要がなく、自社とファクタリング会社のみで取引が完結します。ただし、万が一売掛先が代金を支払わない=未回収の状態になった時は、ファクタリング会社が売掛先に直接請求を行いますので利用したことが知られます。

【メリット】未回収リスクを負わなくてよい

2社間、3社間ともに、ファクタリングでは償還請求権のない契約であることが一般的です。償還請求権がない=売掛先から債権が回収できない場合、ファクタリング会社がその損失を負うため、利用者は万が一の場合に損失を被ることがありません。ファクタリング会社に自費で代金を支払ったりする必要がないのです。

【メリット】審査に通りやすい

中小企業では金融機関の融資を受けたくても受けられない状況にあることが少なくありません。なかなか審査に通らず、資金難に陥るケースもあるでしょう。ファクタリングの場合は、利用者よりも取引先の支払い能力を中心とした審査になることが多いため、自社に赤字決算や負債があっても比較的審査に通りやすく、資金調達しやすいといわれています。

【デメリット】売掛先によっては審査に通りづらい

ファクタリングでは、売掛先の支払い能力を中心とした審査になります。そのため、あまり信用力の高くない売掛先が多いと自社の信用度が高くても審査に通りづらい可能性があります。

【デメリット】売掛先から債権譲渡の承諾を得る必要がある

3社間取引の場合は、売掛先に債権譲渡の承諾を得る必要があります。書類を提出してもらわなければならないので、売掛先との関係性によっては利用しづらいかもしれません。 2社間取引であればこの必要はなく、売掛先に知られずファクタリングを利用することが可能です(ただし債権の確実性をファクタリング会社が売掛先に直接確認できないなどの事情から、2社間取引は3社間取引よりも手数料が高くなる傾向があります)。

【デメリット】手数料が高い

ファクタリングの手数料については、法律で定められた上限がありません。
目安としては2社間取引なら10~20%、3社間取引なら10%以下となっています。いずれも安いとは言えない手数料率ですので、慢性的にファクタリングを利用するようになってしまうと、かえって経営状況が悪化する恐れもあるでしょう。

ファクタリングが好まれる理由① 売掛金の支払サイトが長期化しやすい

人材派遣業では、取引先企業に人材(派遣スタッフ)を派遣し、取引先企業から人件費を入金してもらうという仕組みになっています。取引先企業からの入金は、派遣から2~3か月後になることもあります。

ファクタリングが好まれる理由② 派遣スタッフへの支払いサイトが短い

いっぽう、派遣スタッフに対しては日払い、週払いで給与を支払ったり、就職御祝い金など一時金を渡したりするケースもあります。入ってくるお金は遅く入り、出ていくお金は早く出ていってしまうという流れになっていることから、人材派遣業ではうまく資金繰りをしないとすぐに資金が枯渇してしまう恐れがあります。

ファクタリングが好まれる理由③ 売掛先に大規模企業を抱える機会が多い

人材派遣業界は昨今ますます需要が高まっている業界でもあり、競合相手は多数ありますが、全体的に比較的大手企業や大規模な企業との取引をしやすい業種といえます。小さな派遣会社が地元の大規模な大手企業に従業員を派遣している…といった事例は少なくありません。

ファクタリングでは、売掛先の信用度が高ければ高いほどファクタリング会社の審査に通りやすくなりますので、大規模で安定した経営をしている企業が多ければ多いほど審査の際に有利です。ファクタリング会社によっては、売掛先の信用度が高いことで手数料について比較的優遇してもらえる可能性があります。

ファクタリングが好まれる理由④ 融資を受けにくい傾向がある

人材派遣業では、設備投資や材料の仕入れなど目に見える運転資金を必要としません。そのため、銀行や金融機関で融資を受けようとしても“資金使途がない”ことを理由として融資を断られてしまうケースが多々あります。
また、スタートアップ企業はどのような業種でも融資を受けづらい傾向があるため、新規参入する人材派遣業では開業後しばらく苦しい状況が続く可能性があります。
ファクタリングの場合は資金使途を問われることがありませんし、スタートアップ企業でも売掛金を保有していれば取引に対応してもらえるため、融資を受けづらい状況の企業に対しておすすめの資金調達方法となっています。

人材派遣業に限った問題ではありませんが、ファクタリングを利用する上で気をつけておきたい問題点をご紹介します。

ファクタリングの慢性利用で損失が大きくなる問題

買取り型ファクタリングの仕組みは「手数料を差し引いた売掛金の前倒し」です。本来の支払日には前倒しで受け取った分の売掛金は入ってきません。人材派遣業では常に1~2ヶ月分の資金のゆとりを確保しておくことが必要です。でなければ常にファクタリングを利用してしまい、ファクタリングの慢性化につながりかないからです。
そして、ファクタリングには手数料が10%前後かかってしまいます。
慢性的な利用では損失がかなり大きくなってしまうので、損失を少なくするために計画的に資金を活用し、一時的な利用にとどめることが大切です。

2社間ファクタリングでの支払期日問題

2社間ファクタリングの場合、売掛先はファクタリング取引について何も知らない状態です。本来の支払日が到来したら、当然、利用者(人材派遣企業)に売掛金を支払います。利用者(人材派遣企業)は、受け取った売掛金をすみやかにファクタリング会社へ支払わなければなりません。売掛先からの支払機関が長期にわたるため、資金繰りをしっかりと立て直しておかなくてはファクタリング会社に支払うお金が無くなってしまう恐れがあります。
ファクタリング会社に指定の金額を支払えない場合は高額な損害賠償金の支払いが生じる恐れがあるため、必ずファクタリング会社へ契約通りの支払いができるよう調整しましょう。

人材派遣業では、派遣スタッフに対する給与の支払~売掛先(派遣先)から人件費が支払われるまでの間に1~2か月間の資金ギャップが生じます。この期間の運転資金をあらかじめ確保しておくことが大切ですが、事業の拡大や売掛先の支払遅れなど様々な事情から資金繰りがショートしてしまう可能性があります。次のようなケースでは、ファクタリングを活用することで難局を乗り越えられる可能性があるでしょう。参考にしていただければ幸いです。

ケース①

大口の取引先を獲得するために競合他社と価格競争した結果、取引先は獲得したものの当面のつなぎ資金が不足してしまった。

このケースでは、価格競争を行ったとはいえ目出度く大口の取引先を獲得しているため1~2か月後の売り上げは現状より大幅に上がることが見込まれます。しかしそのために現時点でのつなぎ資金が不足してしまいました。決して自社の経営状態が危ういというわけではないので、売掛金をファクタリングすることでつなぎ資金に充て、一時的な資金ショートを乗り切れば経営が上向きになる見込みがあります。大口の取引先があることや一時的に資金がショートした理由をファクタリング会社に相談すれば、手数料などが有利になる可能性もあるでしょう。

ケース②

一部の取引先(A社)が経営悪化。A社からの支払いが遅れ、人件費がなかなか入らないまま納税の時期になってしまった。自社の経営状況は悪くはなかったが、銀行の融資は下りなかった。

このようなケースでは、A社以外の取引先に対する売掛金をファクタリングで現金化し、納税時期を乗り切るという方法があります。銀行とは違って売掛債権を対象とするファクタリングでは、利用者の経営状態だけで審査を行うことはありません。かといって売掛先の支払い能力だけを見るということでもなく、利用者の人柄や経営状態を総合的に見て多少融通を聞かせてくれるという特徴があります。
なお、ファクタリングには売掛債権の買い取りはせず保証だけを行うというサービスもあります。大型の取引を行っているのであれば、未回収リスクに備えて保証型ファクタリングの利用を検討してもよいかもしれません。

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