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給与や賞与をファクタリングすることができない理由

資金調達の一手段として「ファクタリング」という取引があります。企業間の商取引で生じる売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた現金を本来の支払期日より前に振り込んでもらうというものです。ファクタリング会社は売掛債権しか買い取りませんので、例えば商品在庫や約束手形、サラリーマンの賃金債権(給与・賞与)はファクタリングの対象外です。ところが数年前に「給与ファクタリング」と名乗る違法取引業者が登場し、当時まだファクタリング取引について一般的にあまり知られていなかったのをいいことに悪事を働いて、刑事罰を科されたという事件があります。複数の業者がまるで正当なサービスのように「給与ファクタリング」を行っていたため、給与ファクタリングが違法取引と知らずに利用してしまった方もいたことでしょう。
今回は、給与や賞与をファクタリングすることができない理由と危険な業者の見分け方を解説します。

本来のファクタリングでは、企業間取引で発生した売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、現金を得る=売掛債権の前払いをしてもらうことができます。
給与ファクタリングとは、企業向けの取引であるファクタリングで使われている金銭の流れ(仕組み)を一般個人向けのサービスに置き換えたものです。給与ファクタリング業者は「賃金債権(給与・賞与)の前払いをするサービス」などと称して事業を展開していましたが、その実態は法外な手数料(利息)の支払いを求めるような違法な内容になっていました。

給与ファクタリングが違法な理由

法外な手数料をとる

ファクタリングには、貸金業法のような法令がありません。
本来のファクタリングは、民法の売買契約又は債権譲渡契約にあたるため貸金業の登録や貸金業法に基づいた営業をする必要がありません。給与ファクタリングはこの特徴を悪用し、法外な手数料を取るケースが後を絶ちませんでした。

例:給与ファクタリングを利用したために自己破産に追い込まれた男性
非常勤の塾講師として働いていた男性は、インターネット上に踊る「即日給料を現金化」「給料債権の買い取りなので利息もありません」などのうたい文句に魅力を感じ、ギリギリの生活だったことから給与ファクタリングを利用しました。わずかに不足した生活を手軽に補うつもりだったのに高額な手数料を取られ、18万円しか手取りがないのに25万円を返済しなければいけないという状態に陥ってしまいました。年利に換算するとひと月40%、年間480%ともなる法外な手数料でしたが、連絡が取れなくなると「会社に連絡しますよ」と脅されたこともあったようで、最終的には自己破産するまでに追い詰められてしまいました。場合によっては追加の融資(高額な手数料)を提案されるケースもあるようです。

参照:少しのはずが自己破産に追い込まれる給料ファクタリング…「半グレ」が関与か?|FNNプライムオンライン https://www.fnn.jp/articles/-/25283

貸金業の登録なく貸金業を行う

本来はファクタリングの対象とならない賃金債権(労働者が勤務先から給与や賞与をもらう権利)を売掛債権に見立てて給料の前払をするというのが給与ファクタリングの内容です。しかし、売掛債権と違って賃金債権は直接労働者に支払わなければならないと労働基準法で定められており、第三者(ファクタリング会社など)に譲渡することができる性質のものではありません。
このような点から、給与ファクタリングは“資金がないときに金銭を調達する⇒給与や賞与が入ったら調達したお金を返す”という流れが一般的な貸付と何ら変わりないとされ、国からも給与ファクタリングは貸付にあたるという見解が示されました。 業として貸金を行う場合は貸金業としての登録が必要です。貸金業として登録を受けない業者が給与ファクタリングを行う場合、また登録を受けていても貸金法に基づく手数料率でサービスを提供しない場合は違法取引にあたります。

給与ファクタリングに対する金融庁の注意喚起

給与ファクタリングの危険性に関しては、金融庁からも注意喚起がなされています。
 貸金業登録を受けていないヤミ金融業者により、年率換算すると数百~千数百%になる手数料を支払わされたり、大声での恫喝や勤務先への連絡といった私生活の平穏を害するような悪質な取立ての被害を受けたりする危険性があります。
( 金融庁-ファクタリングに関する注意喚起https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html )

どんな人が給与ファクタリングを利用していたの?

一つには、上述した男性のように、ギリギリで生活をしていた方がインターネット上に踊る甘い文句に魅力を感じて、手数料という落とし穴の危険性に気づかずに利用してしまうケースです。巧みな勧誘や執拗な取り立て、他の業者から借りて返すよう要求されて利用を重ねてしまったようです。
他のケースとしては、まっとうな取引ではないとわかっていながら他に手段がなくて利用してしまうケースです。
クレジットカードやローン、リボ払いなどを利用する方は大勢いらっしゃいますが、中には借金の返済に困って自転車操業状態になったり、多重債務状態に陥ったりして「もうどこからも借りることができなくなってしまった」という方もいます。このような状態に陥ってしまったのには様々な事情があると思いますが、返済が追い付かないことから勤務先に連絡が入ったり、給与や賞与が差し押さえられたりする可能性もあるので、いずれにせよ借金だらけの状態からはやく脱却しなくては生活が借金に押しつぶされるようになってしまいます。
誰からも借りられなくなった時点で選択するべきは、“債務整理”という法律に基づいて返済を楽にする方法です。しかし、法外な金利をかけて悪質な取り立てをする【ヤミ金融】に資金の提供を求めてしまう方もいます。
【ヤミ金融】の新たな形として『給与ファクタリング』や『後払い現金化(後払いファクタリング)』などとファクタリングを騙る違法取引業者が存在したことから、誰からもお金が借りられなくなった方が、誰かお金を貸してくれる人(業者)を求めて違法な給与ファクタリングにたどり着いてしまったケースもあるのです。

本来のファクタリングは、国がすすめる資金調達方法といわれ、中小企業に活用されている安全な取引です。
中小零細企業においては、金融機関の融資を受けたくても受けられない状況であることも多く、資金繰りに困っている企業が後を絶たちません。そのため近年では経済産業省をはじめ国が債権法の改正や保証制度の創設を行い、売掛金(売掛債権)を活用した資金調達をすすめるようになりました。

ファクタリングとは

ファクタリングは、企業間の商取引において発生する売掛債権を対象とした取引です。取り扱われる売掛債権は、一般企業間の商取引で生じるものから国際取引、医療機関の診療報酬債権などがあり、それぞれに取引内容が異なります。ファクタリング取引を扱う会社は金融機関系列から一般企業のファクタリング会社まで多数あります。いずれも“企業が保有する売掛債権を対象とした取引”であること、また“融資(貸金業)ではない”ことなどが共通しています。
現在、数多く存在するファクタリングと言えば、一般中小企業向けにサービスを展開する買取り型ファクタリングの会社でしょう。国がすすめる“売掛債権を活用した資金調達”ができることから、買取り型のファクタリングは主に中小企業の資金調達方法として人気を得ています。

買取り型ファクタリングと保証型ファクタリング

ファクタリングには大きく2つの種類があります。
一つは資金調達を主とした買取り型のファクタリング、もう一つは売掛先の倒産など売掛債権の未回収リスクに備える保証型のファクタリングです。

買取り型ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、本来の売掛金支払い日よりも早く現金を調達するという資金調達手段として有効な取引です。ファクタリング会社から振り込まれる現金からは手数料が差し引かれますが、最短で即日~2週間程度で現金が調達でき、金融機関の融資よりも審査に通りやすく、更に売掛債権の未回収リスクもファクタリング会社に負ってもらうことができます。
買取り型ファクタリングはその取引内容によって2社間取引/3社間取引の2つの方法に分かれます。仕組みとしては、自社が保有する売掛債権(請求書を発行済のもの)をファクタリング会社に売却・債権譲渡し、取引先の支払い日を待たずに現金を調達するという共通した内容です。取引先は本来の支払い日に売掛金(取引先にとっては“買掛金”)を支払いますが、これはファクタリング会社のものとなります。

保証型ファクタリングは、いわば保険のようなサービスで、金融機関が多く提供しているファクタリングになります。売掛債権を保証してもらえるので、新たな取引先の拡大や事業展開に役立ちます。もしも売掛金が無事に回収できた場合は支払った保証料は無駄になってしまいますが、安心して取引を拡大できるという点で便利に活用されています。

給与ファクタリングは違法取引を行う危険な業者として取締りが強化されたことにより、現在はほぼ見かけなくなったと言ってもよいような状況です。しかし、ヤミ金融を行う人々がすべていなくなったというわけではないようです。現在、給与ファクタリングに代わるヤミ金融として、後払い現金化(後払いファクタリング)というサービスが存在しています。法外な手数料を取られたり、個人情報を悪用されたりする恐れがあると危険視されています。
本来のファクタリング(買取り型ファクタリング)の場合、手数料に関する法律は現在まだありません。そのため、中には法外な手数料を取ろうとする業者が存在する可能性があります。一般的にファクタリングの手数料は、2社間取引なら10~20%、3社間取引なら10%以下が相場です。
また、本来貸金法に基づく利息は上限20%(融資を受ける金額によって上限金利がかわる)です。法外な手数料を求めるサービスは利用しないよう注意していただくことが大切です。

違法取引を行う業者と契約してしまい、現在も悩んでいるという方がいらっしゃいましたら、専門の相談窓口や警察へお問い合わせください。
※消費者庁-違法な貸付(ファクタリング等)や悪質な金融業者にご注意ください!
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_026/
こちらのWebページ下部に相談窓口一覧が掲載されています。

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