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調剤報酬ファクタリングとは?仕組みや利用方法をご紹介

スタッフの増員や新しい設備の導入など、企業の発展には出費がつきものです。急な出費で一時的に資金難に陥る可能性があるのは、どのような企業でも共通の悩みでしょう。 近年、中小企業の資金調達方法として「ファクタリング」という取引が普及しつつあります。基本的には売掛債権(企業間の商取引における売掛金)の買取りや保証を行うという内容となっており、企業間の商取引で生じる売掛金(売掛債権)がファクタリングサービスの対象になります。売掛金と言っても企業ごとに多様な性質の売掛金がありますが、中には医療機関や薬局などが保有する診療報酬・調剤報酬を対象としたファクタリングサービスも存在しています。これらをまとめて「医療報酬ファクタリング」と呼ばれることもあります。
ファクタリングを活用することで、本来であれば2か月ほどかかる入金を1週間~2週間程度で現金化することが可能になります。一時的な資金難を回復させるため、医療機関における資金調達の一つの手段として便利に利用していただくことができるでしょう。
今回は、ファクタリングを利用した際の調剤報酬の入金の仕組みや流れ、注意点やメリットなどを解説します。

一般企業における買取り型ファクタリングでは、企業が保有する売掛債権(売掛金)がファクタリングの対象となります。
これに対し、調剤報酬ファクタリングでは、調剤薬局が国保や社保に対してレセプトを提出して請求している診療報酬債権がファクタリングの対象となります。

診療報酬債権(調剤報酬)とは?

診療報酬債権とは、医療機関や調剤薬局が患者に対して保険診療等を行った際に生ずる債権です。日本ではすべての国民が何らかの公的医療保険に加入する制度が導入されていますので、基本的に医療機関や薬局を利用する日本国民はほぼ社会保険や国民保険などに加入しています。そのため、医療機関や調剤薬局が利用者から窓口で受け取る診療費(調剤費)は全体の1~3割のみです。残る7~9割の診療費(調剤費)を「診療報酬債権」と呼びます。
医療機関や調剤薬局は、当月分の診療費等について診療翌月にまとめて国保・社保団体に請求します(レセプトを作成して送ります)。全国約24万か所以上もの医療機関から国保・社保に届けられたレセプトは順次審査され、内容に不備がなければ請求~2ヶ月ほどで入金される仕組みになっています。

ファクタリングの仕組み

資金調達方法としてのファクタリングは、企業間の商取引において発生した売掛金をファクタリング会社に売却・債権譲渡して現金化するという方法です。売掛債権の買い取りを行うファクタリング会社には2つのリスクがあります。

【ファクタリング会社が抱えるリスク】

  • 売掛金は目に見えない資産のために存在の確実性を証明することが難しく、悪意のある利用者によって架空の売掛債権を提供されるなどの可能性がある。
  • 債権そのものの買い取り・譲渡であるために未回収リスク(売掛先の破産や経営破綻による遅延など)もファクタリング会社が買い取らなければならない。
  • これらのリスクがあるため、ファクタリングは比較的高めの手数料率が設定される傾向があります。その反面、本来なら2か月ほども待たなければならない入金を1週間~2週間程度で現金化することができますし、場合によっては売掛先にファクタリングを利用していることを知らせずに売掛金を現金化することも可能です。

    調剤報酬ファクタリングの仕組みは一般的なファクタリングと同じです。ただし、診療報酬債権は債務者(売掛先)が社保や国保といった国の社会保障制度を担う機関であるため、一般のファクタリングと異なる点があります。

  • 売掛先に秘密にする方法はとれず、売掛先に承諾を得た上で取引を行う必要がある
  • ⇒ファクタリング会社にとっては、債権の確実性について信頼のおける機関に確認が取れることになり安全性の高い取引となります。

  • ファクタリングの審査で重要となる“売掛先の支払い能力”が高いことが実績として保障されている
  • ⇒約24万か所もの医療機関から送られる年間10億件以上のレセプトを審査・処理し続けている機関のため、安定した支払い能力があると考えられています。
    これらの事情から、診療報酬債権はファクタリング会社にとってのリスクがかなり低く、手数料率は一般のファクタリングにくらべると低めに設定される傾向があります。

    利用方法

    ファクタリング会社の利用者である調剤薬局が、既に発生している請求について、診療報酬ファクタリングを取り扱っているファクタリング会社に申し込みを行えば利用できます。

    調剤報酬ファクタリングの流れは次のようになります。

  • ①調剤薬局で毎月1日~月末日までの診療報酬債権(調剤報酬)についてレセプトを作成し、診療翌月の10日までに社保・国保に提出
  • ②調剤報酬ファクタリング会社に債権の現金化を依頼(債権譲渡契約)
  • ③ファクタリング会社は国保・社保に債権譲渡通知を発送し、承諾を得る。
  • ④ファクタリング会社が利用者に買取金額(※)を入金する
  • ⑤その後、本来の支払日が到来したら社保・国保からファクタリング会社に診療報酬が支払われる
  • ※「(診療報酬債権額-手数料)=買取金額」なのですが、すぐ入金されるのは買取金額の80%ほどとなることが多いようです。これはレセプトの審査が終わっていないので、診療報酬債権の額が正式に定まっていないためといわれています。
    ファクタリング会社からの入金は2回に分けられ、1回目は1~2週間ほどで80%が支払われます。残りはレセプトが審査に通り金額が確定してから支払われます。2回目の支払いの際にファクタリング利用手数料が差し引かれるケースが多いようです。

    メリット

  • 資金化スピードが速い
  • 金融機関の融資より審査に通りやすい
  • 一般的なファクタリングより信用度の高い取引なので、手数料が低い
  • 負債ではないため企業評価が落ちない
  • 調剤報酬ファクタリングのメリットとなるのは資金化スピードの速さ、審査の通りやすさなどです。金額や内容、利用するファクタリング会社にもよりますが、調剤報酬ファクタリングを利用すると診療報酬債権がおよそ1~2週間ほどで現金化できます。本来、2か月ほど待たなければならなかった調剤報酬をすぐに受け取ることができるので、早急に資金を調達したいときにはとても便利なサービスといえるでしょう。
    金融機関からの融資に通りにくいような赤字決算や負債がある企業でも、ファクタリングなら審査に通りやすいため、利用しやすくなっています。ファクタリングを利用しても負債として扱われないため、将来的に金融機関から融資を受けたいというときや決算書の負債科目を増やして企業評価が下がるのは避けたいという場合にも安心です。
    調剤報酬ファクタリングの利用手数料は買取金額の0.8~2%ほどが目安です。一般的な企業における買取り型ファクタリングでは10~20%ほどの手数料が必要になることもあるため、かなり低い手数料率といえます。

    デメリット

  • レセプトの提出後でなければ利用できない
  • 低いとはいえ手数料がかかる
  • 調剤報酬ファクタリングは手数料率が比較的低い取引ですが、手数料がかかることには変わりありません。一時的な利用に留まれば少ない金額で済みますが、ファクタリングを使うことが慢性化してしまうと手数料がかさんで高額な損失になったり損失を補うための負債が増えたりして結果的に資金繰りが悪化する恐れがあります。
    また、レセプトを提出していなければ診療報酬債権をファクタリング会社に売却することが出来ません。また、レセプトで請求している診療報酬の額面以上の金額をファクタリングによって調達することはできません。

    調剤報酬ファクタリングは、一般企業間の売掛債権を扱う取引にくらべてファクタリング会社にとって専門知識が必要となるため、提供しているファクタリング会社が限られます。サービスを提供している業者数が少ないことは、一見デメリット(利用しづらさ)につながるようにも思われますが、調剤報酬ファクタリングを取り扱っているのは大手メガバンクの子会社やノンバンク系のファクタリング会社などですので、利用する上では安心感が高い取引となるでしょう。
    日本において、ファクタリングは比較的新しいサービスです。ファクタリング会社を取り締まる法令なども現時点では存在しないため、著しく高額な手数料を取る悪徳業者やファクタリングを騙るヤミ金融などが一部に存在してしまっています。ファクタリングを利用する際は、このような悪徳業者らの被害に遭わないよう注意する必要があります。
    その点、大手メガバンクやノンバンク系の運営するファクタリング会社であれば安心なのです。

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