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売掛金担保融資との違いは?ファクタリングが担保不要の理由!

ファクタリングは、中小企業の資金調達方法として近年注目を浴びている取引です。
元々はアメリカやヨーロッパで広く運用されていたものですが、2020年以降、新型コロナウイルスによる感染症の影響から日本の中小零細企業で急な資金繰り需要が高まったことや、オンライン上で手続きが完結するファクタリングの特徴が時代背景にマッチしたことなどが後押しとなり、売掛金を活用した資金調達方法としてのファクタリングサービスを提供する会社が増加しました。
売掛金を活用して資金を調達するというと、売掛金を担保にして金銭を借り受ける取引のように思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしファクタリングは貸付ではないので、売掛金を担保にする必要がありません。
売掛金を担保にして金銭を借り受ける方法を「売掛債権担保融資(ABL)」と言い、これはファクタリングとは全く別の取引です。今回は、ファクタリングと売掛債権担保融資の違いを徹底解説いたします。

日本では、全企業数の内99.7%を中小企業が締めています(参考①)。
また、中小企業庁の2016年版中小企業白書によれば、中小企業全体の内23.9%が経営課題として「資金繰り」の問題を挙げています。中小機構によれば中小企業数は3,570,000社ほどもあるとされていますから、およそ85万社以上もの企業が「資金繰り」という問題を抱えているということになります。

中小企業が抱える資金繰り問題

資金繰りに悩み、負債を抱える中小企業は主な資金調達先として「金融機関からの借入れ」を選択していますが、金融機関の対応は中小企業にとって十分とは言えない状況です。とくに企業と金融機関との関係が希薄になりやすい“起業間もない企業”や“衰退段階にある企業”においては、資金調達の需要と金融機関の対応がマッチしていないという問題点があるようです。
また、2020年以降では新型コロナウイルスの感染拡大によって苦しい経営状況に置かれ、借り入れを増やした企業、赤字経営にならざるを得なかった企業も少なくありません。
負債が大きかったり決算書が赤字だったりという問題点があると、金融機関からの借入が困難になるのは明らかです。このような苦しい状況を乗り越える方法として“売掛債権を活用した資金調達方法”が注目されています。
現在、実際に多くの企業で活用されている“売掛債権を活用した資金調達方法”は、売掛債権担保融資(ABL)と買取り型ファクタリングです。

売掛債権担保融資

売掛債権担保融資(ABL)は、名称のとおり売掛債権を担保として金融機関からお金を借りる方法で、取引上は貸付(融資)にあたります。
一般に「担保融資」というと不動産担保融資などをイメージされる方が多いかと思います。売掛債権は、流動資産にあたる「売掛債権」などを担保とし、売掛先の信用力や過去の販売実績などを加味して評価額が算出されます。更に掛け目(一般的に80%以下)がかけられた金額が売掛債権担保融資の融資可能額になります。
通常通り営業を行えば売掛債権は日々変動しますが、売掛債権担保融資の担保には“質権”が設定されておらず、営業に差し支えることはありません。その代わり、貸し手である金融機関に対して、借り手である企業は定期的に売掛金や在庫の増減について報告します。

売掛債権担保融資は、あくまでも「融資」ですので提供を受けた金銭は返済する必要があります。万が一返済が滞った場合は担保権を実行され、売掛債権を取られてしまいます。仮に予定していた売掛金が売掛先から支払われず、返済ができないという場合においても、利用者の責任において金融機関に返済しなければなりません。

ファクタリング(買取り型ファクタリング)

ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却・債権譲渡して現金を調達する方法です。ファクタリング会社は売掛債権の未回収リスクを含めて売掛債権を丸ごと買い取ります。利用者は、売掛債権と引き換えに「売掛債権の金額-手数料(取引により異なる/10%~20%以下)」を最短即日~2週間で受け取ることができます。
ファクタリングでは売掛債権を担保とする必要がありません。債権そのものを譲渡(売却)しますので、後日売掛先から支払われる売掛金についてはファクタリング会社のものとなります。ファクタリング会社が利用者に対して「提供した金銭の返済」を求めることはないため、ファクタリング取引は貸付とは異なる取引であるとされています。
ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つの種類がありますが、取引の仕組みとしては共通のものです。

そもそも担保とは、貸付の利用者が借金を返済できなかったとき、金銭を貸与した金融機関等が借金(債務)の変わりに回収することができる資産を指します。
例えば個人が銀行で住宅ローンを組んで家を購入した場合は、購入した家が担保になっています。ローンが返済されなくなったときは、銀行が担保(この場合は家)を回収して他社に売却し、債務に充てることができます。
売掛債権担保融資では、売掛債権のほか、在庫や設備機械等の流動資産を担保に設定することができます。なお売掛金を担保とする際、金融機関によって担保の評価額が異なることにより、場合によっては過剰担保となってしまう点について注意が必要です。

売掛債権を担保とする売掛債権担保融資(ABL)とファクタリング取引2種類を比較すると次のようになります。

売掛債権担保融資2社間ファクタリング3社間ファクタリング
売掛先に知られない知られない知られる(承諾が必要)
契約金銭消費貸借契約・貸付売買契約・債権譲渡契約売買契約・債権譲渡契約
調達速度2週間~最短即日~数日1~2週間
手数料5%以下10~20%10%以下
年利15%以下かからないかからない
審査対象利用者を審査売掛先を重視・審査売掛先を重視・審査
審査基準比較的厳しいABLよりはやさしい2社間取引よりやさしい
支払方法月々分割売掛金の回収後に一括売掛先から直接一括で回収
請求権ありなしなし
提供機関金融機関一般ファクタリング会社一般ファクタリング会社

いずれも売掛債権の額面金額以上は金銭の提供を受けられないという点が共通しています。売掛債権担保融資は、赤字や税金の滞納がある企業では審査に通りづらい傾向があります。ファクタリングは、売掛債権担保融資よりも手数料が割高ですが、スピーディに現金化できて、かつ、貸し倒れリスクを回避できるという特徴があります。

ファクタリングは売掛金を担保に入れる取引ではありません。売掛金をファクタリング会社に債権譲渡・売却してしまう=貸付ではないため、担保に入れる必要がないのです。
ファクタリング会社は、本来の売掛金支払い日に売掛先から買い取った売掛債権を回収します。2社間ファクタリングの場合は、売掛先がファクタリングについて認知していないため利用者企業に売掛金を支払いますので、利用者は売掛金を回収したら速やかにファクタリング会社に支払わなければなりません。3社間ファクタリングの場合は、売掛先がファクタリングについてあらかじめ承諾しているため、ファクタリング会社に直接売掛金を支払います。

ファクタリングで支払いができない・売掛金が回収できないとどうなる?

売掛先が倒産するなど“売掛先の事情”から売掛金が回収できなかったときは、ファクタリング会社がその損失を負います。利用者企業はあらかじめファクタリング会社から受け取った金銭について返済する義務を負いません。
ファクタリング会社は回収できない売掛金について直接売掛先に確認しますので、売掛先に内緒で行った2社間ファクタリングの場合であっても、売掛金未回収時には売掛先に知られることになります。
なお、“2社間ファクタリングで売掛先からは売掛金を回収したが、何らかの事情から利用者がファクタリング会社に支払いを行わなかった”という場合には損害賠償金が発生し、ファクタリング会社から利用者企業に対して請求されることになります。

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