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ファクタリングは公務員やサラリーマンは使えない理由とは?!

日本では、企業間の商取引において一般的に掛け取引(信用取引)が使われています。掛け取引とは簡単に言うと「つけ」で商品やサービスを購入することです。同じ取引相手と1か月のうちに複数回商品やサービスの取引が行われた場合、対価となる代金は1~2か月後にまとめて支払われます。この時発生する未収金(未払金)を売掛金(買掛金)と呼びます。
ファクタリングは、このような企業間取引において発生する「売掛金=売掛債権」を活用した取引で、売掛債権を買い取ってくれるファクタリング会社に売却し、本来の支払期日より早く現金を得るという資金調達方法です。そのため、売掛金を保有しない人(掛け取引をしていない企業の事業主や、雇われている個人、公務員など)はファクタリングを使いたくても利用することができません。ファクタリング会社に売るもの=売掛債権を保有していないからです。
今回は、ファクタリングの基礎知識として、公務員やサラリーマンが利用できない理由と危険な違法取引“偽装ファクタリング”についてご紹介します。

ファクタリングは、ヨーロッパやアメリカで古くからおこなわれてきた取引の一つで、日本では2000年代以降に徐々に普及しはじめたものです。主に中小企業の資金調達方法として2020年の債権法改正などが契機となり一般的に広まりました。ファクタリングには資金調達以外にも債権の保証などいくつかの種類がありますが、いずれも“企業が保有する売掛債権を対象とした取引”であること、また“融資(貸金業)ではない”ことなどが共通しています。

ファクタリングの種類

ファクタリングには大きく2つの種類があります。
一つは資金調達を主とした買取り型のファクタリング、もう一つは売掛先の倒産など売掛債権の未回収リスクに備える保証型のファクタリングです。取り扱われる売掛債権は、一般企業間の商取引で生じるものから国際取引、医療機関の診療報酬債権などがあり、それぞれに取引内容が異なります。ファクタリング取引を扱う会社は金融機関系列から一般企業のファクタリング会社まで多数ありますが、中でも一般中小企業向けに買取り型ファクタリングサービスを展開する会社が非常に多く存在しています。

買取り型ファクタリングの仕組みと流れ

中小企業では、企業間の商取引において信用取引と言われる“掛け取引”が日常的に行われます。

掛け取引では商品・サービスの納品を行っても即時に売上が入るわけではありません。売り上げは未収金=売掛金となり、取引先に請求書を発行します。同じ取引先に対して1か月中に複数回納品を行う場合、都度請求するケースと、まとめて請求するケースがあります。
この場合、自社は取引先が代金を支払うまで売掛金を抱えたまま長期間(長い場合は1~2か月ほど)待つことになるため、場合によっては仕入の発注や外注業者への支払いに使う資金繰りに困窮することも少なくありません。
中小零細企業においては、金融機関の融資を受けたくても受けられない状況であることも多く、資金繰りに困っている企業が後を絶たないことから、経済産業省をはじめ国が売掛金(売掛債権)を活用した資金調達をすすめるよう働きかけています。 そこで売掛債権を活用して資金調達をするファクタリングが広まっているのです。

買取り型ファクタリングは、2社間取引/3社間取引の2つの方法に分かれますが、いずれも仕組みとしては同じです。自社が保有する売掛債権(請求書を発行済のもの)をファクタリング会社に売却・債権譲渡し、取引先の支払い日を待たずに現金を調達するという内容になっています。取引先は本来の支払い日に売掛金(取引先にとっては“買掛金”)を支払いますが、これはファクタリング会社のものとなります。買取り型ファクタリングとは、いわば売掛債権を前倒しで受け取るという方法です

ファクタリングを利用できる人物像

ファクタリングは、企業間取引において発生する売掛債権を活用した取引です。
とくに支払いサイトが長い建築・建設業界などで普及が進んでおり、一部のファクタリング会社では国土交通省の下請債権保全事業に対応しています。その他の様々な業種でも法人・個人事業主やフリーランスで働き売掛債権を抱える経営者がファクタリングを活用しています。
いっぽう、売掛債権を保有していない企業、手形取引しか行っていない企業(手形取引も信用取引ですがファクタリングの対象となるものではありません)、労働者個人は利用できません

さて、公務員の方でも利用できるファクタリングはあるでしょうか。
答えは「公務員はファクタリングを利用することができない」ということになります。
公務員は、基本的に営利目的の副業を禁止されています。一部の公務員の方には、執筆活動や講演活動などをされる機会はあるかもしれませんが、基本的に売掛債権が発生するような取引は行われないでしょう。そのため、公務員の方はファクタリングの対象となる“売掛債権”を持つ機会がないと言えますので、ファクタリングを利用することはできません。

賃金債権(給料、賞与)はファクタリングできない

当然ながら、公務員が副業ではなく賃金債権を売掛金と見立ててファクタリングを利用することもできません。サラリーマンやアルバイトなど、公務員以外の方であっても同様です。
賃金債権はその性質として他者に売却・譲渡することができない債権です。ファクタリングと称し、個人(労働者)から賃金債権を買い取って金銭を提供し、その後当該個人から資金の回収を行うという行為は貸金業にあたります。
ファクタリングは貸金業ではないので、金融機関系列などのファクタリング会社を除いて貸金業の登録を受けていません(登録する必要がないためです)。貸金業の登録がない業者が「給与ファクタリング」などと称して金銭の提供を行うという行為は違法行為にあたります。トラブルや犯罪に巻き込まれないためにも、給与ファクタリングなどとファクタリングを騙る悪徳業者、ヤミ金融には十分注意し、利用しないようにしてください。
次のようなファクタリング会社は悪徳業者、ヤミ金融の可能性が高いです

  • 「公務員も使える給与ファクタリングを提供しています」
  • 「2社間ファクタリングなら給料もファクタリングに使えるし、会社にバレません」
  • 「サラリーマンや個人も利用できるファクタリングです」
  • “偽装ファクタリング”にご注意ください

    給与ファクタリングなど、ファクタリングを騙る違法取引業者については「偽装ファクタリング」と呼ばれています。金融庁でもファクタリングを騙る違法取引業者に関して次のように注意喚起を行っています。
    貸金業登録を受けていないヤミ金融業者により、年率換算すると数百~千数百%になる手数料を支払わされたり、大声での恫喝や勤務先への連絡といった私生活の平穏を害するような悪質な取立ての被害を受けたりする危険性があります。
    ( 金融庁-ファクタリングに関する注意喚起https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html )

    ファクタリングが使えないなら公務員の方の資金調達方法は何もないのでしょうか。
    当然、そのようなことはありません。公務員の方でもクレジットカードを持ち、日常的に使っていらっしゃる方はとても多いですし、住宅ローンや車のローンを支払っている方もごく一般的にいらっしゃいます。同じように、必要に応じて銀行やその他の金融機関でお金を借りることが可能です。公務員の場合、勤め先の信用度が高いことなどから融資の審査には比較的通りやすく、借りられる金額も大きい傾向があります。
    偽装ファクタリングなどの甘い言葉に騙されてトラブルを招くようなことは控え、公務員やサラリーマンの方は、ご自身の経済状況に応じて無理なく計画的にお借入をご利用ください。

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