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ファクタリングの掛け目とは?後日清算・仕組みや注意点を解説

ファクタリングでは売掛金に対して掛け目がかかることがよくあります。ファクタリングでは万が一の際の未回収リスクをファクタリング会社が保証することが多いため、保全の意味合いで掛け目を使っている会社がほとんどのようですが、ファクタリング会社の契約内容によっては利用者にとって不利な設定にされていることもあるため注意が必要です。
とはいえ、そもそも掛け目は取引の種類や内容によって比率が変わる性質のもので、また「●%~●%まで」という法的な決まりがないことからどのように注意すればいいのか分かりづらいというのも事実です。
今回は、掛け目とはどういうものなのか、仕組みや注意点を解説します。

一般的に「掛け目」とは金融機関で担保付の融資を受ける際、または債券売買において担保を売却した際の回収見込みに応じて変動する「担保評価額」を指す用語です。担保評価額=融資可能額になりますので、掛け目の数値が多いほど融資金額が高くなるということになります。

金融業界における掛け目

掛け目はもともと例えば不動産担保ローンのような“預金や債券、不動産などを担保に現金を借りる時”に使う言葉です。
お金を借りた利用者(債務者)が万が一返済しなかった場合、金融機関は担保とした預金や不動産を売却して資金を回収します。この時、預金であれば口座を差し押さえることでかなり高い回収可能性がありますが、不動産は場合によってはあまり高く売れない可能性があります。そこで金融機関は担保の対象による回収可能性に応じた掛け目比率を設定し、その範囲内で融資を行うのです。一般に、担保の際の掛け目は、預金は100%、国債は90%、不動産は70~80%とされることが多いようです。

【例:時価評価額1000万円の不動産を担保としたローンを受ける場合に借りられる金額】
→1000万円×70%=700万円が最大融資可能額となる

ファクタリングにおける掛け目

ファクタリングにも「掛け目」という言葉が使われることがよくあります。ファクタリングは融資(借金)ではありませんので、担保は存在しません。ファクタリングにおける掛け目は、担保ではなく「一時金/仮押さえ金」のような役割を担います。
ファクタリングでは売掛金=売掛債権をファクタリング会社に売却(債権譲渡)することで即座に現金を調達します。実際の支払日が到来したら、取引先から売掛金が支払われますが、それはファクタリング会社のものとなります。しかし、万が一取引先が売掛金を支払わなかった場合(倒産した場合など)、その損失を負うのもファクタリング会社です。償還請求権付の契約をしていない限り、利用者に弁済したり保証したりする義務はありません。
そこで、ファクタリング会社としても債権の保全のために掛け目を用いることが多くなっているのです。基本的には「一時金/仮押さえ金」という役割なので、最終的に売掛金が支払われた際、清算されるようになっていますが、一部のファクタリング会社では掛け目の精算をしないという契約内容になっているケースもあるようです。掛け目の精算がないとなると、ただ手数料が高いだけ(手数料の二重取り)になってしまいます。自社にとって不利益のないよう契約内容はよく確認して利用するようにしてください。

ファクタリングでは、一般的に「売掛金―手数料=入金される現金」が支払われる仕組みになっています。しかし、実際は「売掛金×掛け目%-手数料=入金される現金」が即座に支払われ、後日本来の支払期日が到来して売掛金が入金される際に掛け目の分が精算されるという流れになっています。掛け目が設定されないケースもありますが、多くのファクタリング会社では掛け目を取り入れている傾向があるようです。掛け目が使われる場合、売掛金の満額(手数料を引いただけの金額)がすぐに入金されるわけではないので、注意しましょう。

未回収リスクや利用頻度で比率が変わる

ファクタリングでは2社間取引なら70~80%、3社間取引なら80~90%ほどの掛け目になる傾向があります。
また、取引先の支払い可能性や利用者のファクタリング利用頻度によっても比率が変わります。取引先が安定した企業で信用度が高い場合は、回収可能性が高いとみなされるため掛け目率が高くなります。
3社間取引の掛け目率が高いのは、契約の過程で取引先とファクタリング会社とのやり取りが存在するためと、売掛金が直接ファクタリング会社に支払われるためです。
2社間取引においては“本来の支払期日が到来したら、利用者が取引先から売掛金を回収してファクタリング会社に振り込みをする”という流れになりますが、中には利用者がファクタリング会社に振り込みをしない(できない)ケースがあります。そのため2社間取引の方が掛け目率は低く設定される傾向がありますが、何度もファクタリング会社を利用していて利用者とファクタリング会社の間である程度の信頼関係が構築されている場合、ファクタリング会社が掛け目を高く設定してくれる可能性があります。

掛け目のほかに手数料が発生する

ファクタリングでは掛け目の他に手数料が発生します。ファクタリングは借金ではないので利息(金利)はありませんが、現金化する際に手数料を差し引かれる仕組みになっています。
手数料は、2社間取引で10~20%、3社間取引で1~10%程度に設定されることが多いでしょう。ファクタリング会社や売掛金の金額、取引先の回収可能性によって比率が変わります。
手数料は掛け目と違い、ファクタリング会社に支払う利用料ですので、返ってくることはありません。あまりに手数料が高いとかえって負担になりますので、注意が必要です。

実際にファクタリングで受け取れる金額は?

手数料と掛け目を考慮すると、ファクタリングを利用してすぐに受け取れる現金の金額はあまり高くなくなってしまうかもしれません。

  • 掛け目:売掛金×70~90%
  • 手数料:1~20%
  • これらの金額が差し引かれることになります。

    ただし掛け目の金額については、売掛金が取引先から支払われたあとに清算されるので、後で返ってくるお金と考えてよいでしょう。
    2社間取引の場合は、利用者がファクタリング会社に支払う際に掛け目の分を差し引いて支払います。
    3社間取引の場合は、掛け目として納めたお金がファクタリング会社から売掛金の支払い後に振り込まれるという仕組みです。
    受け取れる資金を少しでも多く確保するため、掛け目の精算があるかどうか(悪徳な業者ではないか)契約内容をよく確認してから利用ましょう。

    【例① :100万円の売掛金を売却(2社間取引)した際にすぐ入金される金額】

    →100万円×掛け目70%-100万円×手数料10%=70万円-10万円=60万円
    →後日売掛金が入金された際、利用者はファクタリング会社に支払いを行います。
    「100万円-100万円×70%=30万円」は清算されるので、「60万円(入金された額)-30万円(仮押さえ金)=30万円」をファクタリング会社に入金します。
    →最終的に、100万円の売掛金から60万円が即現金化、30万円は売掛金入金日に手元に残せるため、手数料10万円だけをファクタリング会社に収めるという結果になります。

    【例② :100万円の売掛金を債権譲渡(3社間取引)した際にすぐ入金される金額】

    →100万円×掛け目80%-100万円×手数料5%=80万円-5万円=75万円
    →後日売掛金が入金された際、利用者はファクタリング会社に支払いを行います。
    「100万円-100万円×80%=20万円」は清算されるので、「75万円(入金された額)-20万円(仮押さえ金)=55万円」をファクタリング会社に入金します。
    →最終的に、100万円の売掛金から75万円が即現金化、20万円は売掛金入金日に手元に残せるため、手数料5万円だけをファクタリング会社に収めるという結果になります。

    掛け目や手数料の比率は相場をご紹介しましたが、法的に整備されているわけではありません。まれに高額な手数料を設定したり、掛け目を「保証金」として回収したりする悪徳業者がいますので、十分注意が必要です。
    掛け目のお金は後日返ってくるといっても、手数料が差し引かれていることに変わりはありません。ファクタリングを利用せずに売掛金を回収できるのであれば100%を資金とすることができます。しかし、中小企業では掛け取引が盛んに使われており、支払サイトが数か月先と長期になることもよくあります。業種によっては、仕入れに非常にお金がかかり、売り上げを立てても売掛金を回収するまでに時間がかかるのでなかなか利益が出ない、従業員のボーナスが払えない、大きな仕入れをしたいのにできない…という深刻な悩みを抱えているケースも少なくありません。そのようなときは、一時的に売掛金をファクタリングで現金化して資金繰りを調整することで、経営状態を立て直すことができる可能性も大いにあるでしょう。
    少しでも損失を減らすためには、掛け目の設定があっても後日清算されること、手数料が相場より著しく割高に設定されていないことを確認してください。また、あちこちのファクタリング会社を利用するより、利用しやすいファクタリング会社が見つかったら1社だけを利用する方がファクタリング会社との関係性が構築しやすくなります(※継続的なファクタリング利用を推奨するわけではありません。慢性的なファクタリング利用では手数料がかかることからかえって資金繰りが悪化することがあるので気をつけてください)。

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