MIRAGE
コラム

コラム




【まとめ】経済産業省が認めるファクタリングとは?

ファクタリングは国がすすめる資金調達方法の一つといわれています。一方で金融庁からは「ファクタリングの利用に関する注意喚起」というWebページが発信させられているため、本当に国がファクタリングの活用をすすめているのか疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
今回はファクタリングの有用性と、経済産業省が売掛債権の活用を推奨しているWebページ、金融庁から発信されている注意事項をわかりやすくご紹介します。

日本では企業間の商取引において“商品・サービスを先に提供し、後で現金を受け取る”掛け取引(企業間信用取引)が一般的に行われています。商品の提供者にとっては取引先を拡大しやすい反面、売り上げが入金されるまで60日もかかることがあり、その間の資金繰りに困窮するケースも少なくありません。
ファクタリングとは、会社が保有している売掛債権(売掛金)をファクタリング会社に買い取ってもらうというサービスです。基本的には売掛債権の未回収リスクについてもファクタリング会社が負いますので、売掛先の倒産などで生じる未回収リスクを回避することもできます
似たようなサービスのひとつとして、商品の提供時に現金の代わりとなる約束手形が使われ、数か月後に清算される「手形取引」もあります(※)。手形取引では未回収リスクを回避することはできませんが、日本では昔から手形取引が一般的でした。そのためファクタリングというと比較的新しいサービスという認識になるようですが、ファクタリングはアメリカやヨーロッパ諸国では古くから活用されていた取引です。

ファクタリングは、特に次の場合に有効です。

  • 売掛金が多くて現金が不足し、資金繰りに困窮している
  • 資金が足りないのに、銀行では融資に対応して貰えない(審査に通らない)
  • 売掛債権(売掛金)を売却・債権譲渡するファクタリングでは、取引の内容や種類によりますが、最短で即日~2週間ほどで売掛金を現金化することができます。取引の内容は「売掛金の前倒し」ですので売掛金の上限までしか調達することはできません。手数料がかかる点はデメリットとなるものの、融資ではないので決算書に悪影響を及ぼすことがないのは嬉しいメリットと言えるでしょう。
    金融機関の融資では利用者本人の返済能力を審査されますが、ファクタリングの場合は売掛先の支払い能力を中心とした審査になります。比較的審査に通りやすく、ファクタリング会社によって審査基準が異なるため「A社で審査に落地手もB社で通った」ということもあり得るでしょう

    ※手形はこれまで最長90~120日の支払機関が設けられていましたが、現金が手元に入るまでの期間が長く、期限前に現金化するとしても割引料(手数料)が高いことから、立場の弱い受注側企業に対する負担が多いとして決済期間の短縮(60日以内)など運用の見直しを進められています

    企業が抱える資金=売掛金は、そのままではただの未回収金です。
    この未回収金を現金にして資金とし、次の案件の仕入れや従業員のボーナスに使うことができれば余計な負債を増やさずに済みます。ファクタリングは売掛債権を活用した新しい資金調達方法なのです。

    売掛債権の活用を推奨

    経済産業省はこうした「売掛債権の活用」をすすめています。
    売掛債権の活用には、ファクタリングの他に売掛債権担保融資という取引がありますが、この売掛債権担保融資には経済産業省による保証制度が設けられています。

    売掛債権担保融資について

    経済産業省中小企業庁では、中小企業者が不動産担保に過度に依存せずに資金調達ができるよう、売掛債権担保融資保証制度を創設し、普及を進めています。売掛債権担保融資保証制度は、売掛債権を担保とした中小企業者の借入について信用保証協会が保証を行うものです。
    売掛債権担保融資保証制度は、融資ではないファクタリングでは使えませんが、なぜ経済産業省はこのような保証制度を創設してまで売掛金の活用をすすめているのでしょうか

    そもそも「中小企業者が不動産担保に過度に依存」しなければならなくなっているのは、中小企業の成長資金調達方法が“金融機関からの借り入れ・金融機関以外からの借り入れ”が一般的であるためです。中小企業では無借金企業が少なく借り入れへの依存度が高く資金繰りに窮している企業が少なくはありません。しかし、中小企業による金融機関への資金調達ニーズに対して十分に融資を受けることができているかと言えば必ずしもそうとは限りません。金融機関からの借入の条件が厳しいために資金難に陥る中小企業は多く見られます
    そこで、「企業は自社が望む資金の性質に応じて、金融機関以外からの資金の調達も考慮し、資金調達の多様化・複線化を進めていくことも重要」であるとされ、売掛債権の活用が推奨されるに至ったのです。

    債権法改正とは?

    ファクタリングは融資ではなく、売掛債権担保融資とは種類が異なります。しかし債権法改正など背景もあり、経済産業省もすすめる“売掛債権を活用した資金調達方法”として広まっています。

    ファクタリングが普及した背景の一つに2020年4月1日の債権法の改正があります。債権法が改正されたことによってどのような効果が出たかというと、譲渡制限特約の制限が緩和されたことで、これまで日本ではハードルが高かった売掛債権を利用した資金調達が容易にできるようになったのです。このような効果で利用しやすくなった資金調達方法が「ファクタリング」と「売掛債権担保融資(ABL)」なのです。

    ファクタリングABL
    契約の内容売買契約、債権譲渡金融消費貸借契約(借金)
    資金調達先ファクタリング会社銀行、金融機関
    審査基準比較的やさしい比較的厳しい
    資金調達可能額売掛金額が上限担保の評価次第
    未回収リスクファクタリング会社が負う利用者がお金を返済する

    ファクタリングとABLを比べると、ファクタリングの方が比較的審査に通りやすい傾向があります。ABLは年利が低く設定されます(年利2~10%)が、ファクタリングよりも審査基準は厳しく、「金融機関でお金を借りるために売掛金を担保にする」という取引なので売掛先の未回収リスクは利用者が背負わなければなりません。

    なぜファクタリングは経済産業省から保証されないのか?

    売掛金を活用した資金調達方法はファクタリングとABLという2種類の取引がありますが、経済産業省が保証制度の対象としているのはABLだけです。それは2つの取引における上述のような差があること(ABLは審査が厳しいこと、ファクタリングは利用者が未回収リスクを負う必要がないこと)が理由の一つとなっていると考えられます。

    下請債権保全支援事業について

    一方、国土交通省では、建設・建築業界でファクタリングが活用されている現状にもとづき、下請債権保全支援事業を実施しています。指定ファクタリング事業者を利用した場合、買取り・保証にかかる手数料について国からの助成を受けられるという内容です
    業種や利用できるファクタリング会社が限られてしまいますが、該当業種の方には便利に活用していただけるでしょう。

    このように国がファクタリングを含む売掛債権の活用をすすめる一方で、金融庁はファクタリングについて注意喚起をするWebページを発信しています。実は、ファクタリングの中には“偽装ファクタリング”などと呼ばれる悪徳業者やヤミ金融が混ざっていることがあるためなのです。

    金融庁は“ファクタリングを騙る悪徳業者”について注意喚起している

    ファクタリングは比較的新しい取引方法のため、内容が一般に広く浸透していない部分があり、また貸金業のように手数料が法律で定められているわけではありません。貸金業の場合は事業を行うために貸金業者の登録が必要ですが、ファクタリングは必要ありません。
    こうした背景から、違法取引を行う業者が出てきてしまい、実際に利用者が被害に遭うという事件が存在しました。金融庁は、このような被害を増やさない・出さないために危険な業者・取引について注意喚起を行っています。

    安全なファクタリングを利用するために、次の事に気を付けてください。

  • 「給与ファクタリング」はファクタリングを騙る違法取引です。
  • ヤミ金融が行っている取引なので、絶対に利用しないでください。

  • 相場を大幅に超える手数料の業者は利用しないようにしましょう。
  • ファクタリングの手数料の相場は、2社間取引:10~20%、3社間取引:10%以下です。

  • 手数料の後払いや分割払いは、融資と同じ行為とみなされます。
  • 安全なファクタリング会社であれば、分割払いなどは対応していません。
    分割払い、後払いと使いやすそうな甘い言葉で結果的に高額な手数料をだまし取る手口が存在するので、注意しましょう。

    経済産業省では、売掛債権を活用した資金調達方法を進めています。方法としては、ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)がありますが、ABLは未回収リスクを利用者が追う必要があり、ハードルが高い取引でもあることから経済産業省が売掛債権担保融資保証制度を創設し、普及に努めています。
    ファクタリングはそもそも未回収リスクを利用者が追う必要がなく、比較的審査の基準が低い取引なので利用しやすいですが、その反面、悪質な業者も存在しますので、ヤミ金融など違法取引を行う業者の被害に遭わないよう注意してください。

    【新着記事】