コラム
商品在庫ファクタリングとは？仕組みや流れを解説
ファクタリングについて調べていると「商品在庫ファクタリング」というキーワードに出会うことがあります。ファクタリングとは基本的に売掛債権を売却・債権譲渡する行為ですが、販売前の商品在庫をファクタリングに使うことはできるのでしょうか。もし商品在庫ファクタリングができる場合、ファクタリングに活用した在庫はどうなるのでしょうか。
今回は商品在庫ファクタリングの実態や似たサービスについてご紹介します。
商品在庫ファクタリングとは
そもそもファクタリングは売掛債権を対象とした取引で、債権の保証や売買・債権譲渡を行うものです。売掛債権を売却・債権譲渡することで、利用者（企業）は手数料を差し引いた売掛金を前倒しで手にすることができ、急な資金難などを乗り越えるために役立たせられます。
商品在庫ファクタリングとは、抱えている商品の在庫を売掛債権の代わりに売却し、資金を得るというサービスのようです。どのような流れで行われるのでしょうか。
商品在庫ファクタリングの流れ
売掛債権を対象とする通常のファクタリング（2社間取引）は、次のような流れで行われます。
商品在庫では、売掛金の代わりに商品在庫が買い取られるという流れになるでしょう。その後は2通りのパターンが考えられます。
[A]買い取られた在庫は商品在庫ファクタリング会社のルートで売却される
[B]商品在庫ファクタリング会社が在庫を保有しておき、必要になったらA社が買い戻す
このとき、[A]の場合は商品在庫ファクタリング会社が古物商の資格を有している必要があります。[B]の場合は実態として貸金業に値する可能性があるため、商品在庫ファクタリング会社は貸金業として登録している必要があるでしょう。
本来、売掛債権のファクタリングであれば、貸金業や古物商の登録・資格は不要ですので、一般的なファクタリング会社がこれらの資格をあらかじめ持っているということはほとんどありません。商品在庫ファクタリング会社を利用する際は、サービスの提供内容と、取引に対応する資格の有無についてしっかり確認しておく必要があります。万が一、資格が必要であるにもかかわらず無登録・無資格で営業している会社を利用してしまうと、トラブルに巻き込まれる可能性がありますので注意しましょう。
実際にサービスを提供している業者はあるのか
商品在庫ファクタリングについては、いくつかのWebページにサービスの内容などが綴られていますが（参考①～③など）、実際にサービスを提供しているファクタリング会社に確認しなくては実態としてどのように取引が行われているのか知るすべはありません。
しかし、残念ながら現在商品在庫ファクタリングのサービスを取り扱っているファクタリング会社にたどり着くことはできず、商品在庫ファクタリングの実態がなかなかつかめないのです。
一方、過去には三菱UFJ銀行が「MUFGトレーディング株式会社」を設立し、在庫買取や貸付を含めた取引を行う事業の計画を進めているという発表がありました。
2023年現在時点では、企業のWebページが未完成の状態（参考⑤）ですが、今後の事業内容が商品在庫ファクタリングのような取引を含む可能性はあるかもしれません。
商品在庫ファクタリングに似たサービス
商品在庫ファクタリングサービスは現在一般的に普及している取引ではないようです。しかし、商品在庫ファクタリングに似たサービスが存在します。それはABLという取引で、融資の一種になります。
ABL
ABLはAsset Based Lendingの略で、利用者は事業の流動資産(動産、在庫、売掛債権など)を担保として融資を受けます。
商品在庫を活用して資金調達をすることができますが、融資にあたりますので、貸金業の登録がある金融機関などでしか扱うことができない取引です。担保として金融機関に提供する商品在庫は、その価値を金融機関に審査され、融資を受けられる上限金額を決められます。過去の販売実績などから粗利を算出して評価額を求められるため、在庫管理などの体制が整備されている必要があります。
ABLでは、担保と言っても質権が設定されず、代わりに「譲渡担保」という形をとります。
在庫や売掛債権は流動的なものなので、一般的に営業を行っていれば日々変動してしまいますが、ABLの担保には「質権」が設定されていないため、担保に入れた商品在庫も営業に使用することができます。
まとめ
商品在庫ファクタリングは、ファクタリングについて調べているとネットで目にするキーワードですが、実際にサービスとして提供しているファクタリング会社を探すのは困難です。また、取引の内容によっては通常のファクタリング業務では不要な資格や登録を受ける必要があり、無資格・無登録で当該サービスを行っている会社を見つけた場合はむやみに利用せず、取引内容や会社に問題がないかよく確認した方がいいでしょう。
商品在庫を使った資金調達方法としては、金融機関でABLを利用するという方法があります。ご検討の際は取り扱いのある金融機関にご相談ください。