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手形割引・約束手形・ファクタリングとの違いを解説!

ファクタリングと手形割引の仕組みは“掛け取引した売上のお金を早急に現金化する”という点でよく似ていますが、使い方や現金化する場所が違います。それぞれの特徴と違い、仕組みについて知ることで、決算書への影響や資金繰りの成果を良くすることができるでしょう。
今回は、手形割引の特色や仕組み、利用方法と、ファクタリングとの違いについて解説します。

ファクタリングと手形割引の共通点は、掛け取引によって生じた売掛金を、取引先(売掛先)の支払期日を待たずに現金化するという点にあります。いずれも手数料等が発生しますので売掛金の100%を即座に入手できるわけではありませんが、仕入れや外注先への支払いなどのために現金がすぐに必要な場合にキャッシュフローを改善することができたり、未回収リスクを避けることができたりとメリットの大きい取引です。どちらもBtoB取引を中心とする中小企業の資金繰りなどのために幅広く利用されています。
このように共通点は多いのですが、それぞれの取引の仕組みには様々な違いがあります。仕組みをよく理解して活用することでより大きな効果を得ることができるでしょう。ファクタリングと手形割引の違いは次のとおりです。

ファクタリングファクタリング手形割引手形割引
取引の種類2社間3社間金融機関(銀行など)手形割引業者
賃金業法××
償還請求権××
審査対象売掛先売掛先利用者利用者
手数料等の目安手数料10~20%手数料1~10%年利1~5%年利5~20%
現金化する日数最短即日~数日~数週間一週間~最短即日~
取引先に知られない知られる知られない知られない

ファクタリング

ファクタリングは、利用者が保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却・債権譲渡する取引です。ファクタリング会社は、買い取った売掛金を現金として利用者に支払い、売掛先から期日に支払われる代金を回収します。利用者は未回収の売掛金を現金化することができるので、急な資金調達やキャッシュフローの改善に役立ちます。
このような買取り型のファクタリングは融資ではないため、貸金業として登録していないファクタリング会社がほとんどですが法律上の問題はありません。また、決算書上では負債にはならないことから、現金化した売掛金を使って既にある負債を返済することができれば、賃借対照表のオフバランス化=企業価値の向上につながります。
ファクタリングの内容(2社間/3社間ファクタリング)によっては、売掛先に知られずに資金調達したり、最短で即日に現金化することができたりします。手数料はあまり安くはありませんが、償還請求権がないため、万が一売掛先が倒産や未払などで売掛金を期日に支払わなかったとしても利用者には損失を負う義務はありません。ファクタリング業者が未回収リスクを含めて買取りをするということもファクタリングの大きなメリットなのです。

手形割引

手形割引は、売掛金の代わりに約束手形(債務証書)を現金化する資金調達方法です。
企業間の商取引において、現金の代わりに手形を利用する手形取引という方法があります。古くから用いられていた取引方法で、中でも代金決済に使われるのが約束手形です。
約束手形は「今は手元にお金がないけれど、将来的にお金が入る」というときに使います。まずは金融機関で当座預金口座を開設し、約束手形用紙を発行します。発行した約束手形に支払金額と期日を使用し、現金の代わりとして商取引に用います。最大120日まで支払い期日を伸ばすことができるので、約束手形を受取った企業(受取人)にとっては、現金が長期にわたって入ってこないというデメリットがあります。
しかし受取人は、受取った約束手形を銀行や手形割引業者で買い取ってもらうことで即座に手形を現金化(手形の額面金額-年利・手数料=現金※)することができます。このように受取った約束手形を売却すること=手形割引という取引といいます。手形割引をすることを、一般に「手形を割る」といいます。

手形割引の特徴は次のとおりです。

早期の資金調達

銀行で手形を割るときでも1週間前後~、手形割引の業者に依頼した場合は最短で即日~、現金を入手することが可能です。約束手形は長期取引に使われることが多いので、なかなか売上が入金されず困っている企業も少なくありません。手形割引には、キャッシュフローの改善や資金調達が速やかにできるという効果があります。

償還請求権がある

手形割引は、原則として償還請求権があるため、万が一取引先が支払いをしなかった場合に利用者(手形の受取人)も損失を補償しなくてはなりません。ただし、手形を発行した取引先(手形の振出人)は債務不履行を起こすと金融機関からの融資を受けられなくなったり社会的な信用を失うことにつながったりするので、振出人にとっても不払いのリスクは非常に大きく、必死で弁済(支払い)をしようとする傾向があることから手形の未回収リスクは低いと言われています。
※ 割引料や利息は手形の期日までの残り時間や信用リスクに基づいて計算されます。

信用度が高い&審査に通りやすい

手形は銀行が発行する書面ですので、法的な拘束力があり、非常に信用度が高いアイテムです。この拘束力によって、もしも取引先が約束手形を不払いにすると金融機関からの信用を失うという取引先にとっての大きなデメリットがあります。しかも半年に2回の不渡り(不払い)を出すと金融機関からの融資を受けられなくなるという決まりがありますので、事実上の倒産に追い込まれてしまうことも。そのため約束手形を不払いにされる可能性は比較的低い傾向があると言われています。
手形割引を利用する際には、金融機関や専門の業者の審査を受ける必要がありますが、上述の理由によって売り上げの回収可能性が高いことから比較的審査には通りやすいようです。ただし、銀行の手形割引の場合は利用者(手形の受取人)の信用度もチェックされますので、経営状態があまり良くないような場合ですと審査を通過できない可能性もあります。とはいえ審査基準は全業者共通のものではありませんので、専門の業者や他の銀行も併せて検討してみるとよいでしょう。

手続きがシンプル

手形割引は、決算書や資金繰り表など複数の書面を提出しなくても利用することができることが多いです。手続きそのものがシンプルで利用しやすい取引と言えるでしょう。

手数料・金利が比較的安い

手形割引の際に銀行などの金融機関を利用した場合、手数料が格段に抑えられる可能性があります。仮にビジネスローンで融資を受けるとすると、10~15%の金利が盗られることになりますが、手形割引の場合は銀行なら1~5%ほどの年利で利用することができるようです。

どういう時に手形割引を使うの?

手形割引は、そもそも手形取引を扱っている企業でなければ利用することができません。手形取引を扱っていて手形がたくさんあるという企業は、すぐに現金が必要な時や、売掛先に知られずに資金繰りを調整したいとき、キャッシュフローの改善のために手形割引を利用すると便利です。手数料が低いという点もメリットとなるでしょう。

手形割引の利用方法

手形割引は銀行または専門の業者で行います。

  • 利用者(手形受取人)が、銀行や専門業者に手形割引を依頼します。
  • 銀行・専門業者が信用情報を審査します。
  • 審査に通過したら銀行・専門業者が利用者に対して「手形の額面-手数料など=現金」を支払います。利用者は現金の使途を問われないので、仕入や給与の支払い等に使用することが可能です。
  • 支払期日になれば取引先(手形振出人)が手形を発行した銀行に額面金額を入金します。
  • 手形を割った銀行または業者は、手形を発行した銀行に代金を入金してもらいます。
  • このような流れで取引されますので、基本的に取引先(手形振出人)は手形割引が利用されたことを知ることはありません。

    ファクタリングと手形割引、どちらを使うべき?

    約束手形はファクタリングの対象になりませんので、主な商取引において手形を使っているという企業では手形割引を利用する方がよいでしょう。逆に、手形取引を一切扱っていないという企業においては、割る手形がないので手形割引をすることはできません。
    手形も売掛金もどちらも同じくらい持っているという場合、手数料の低さなら手形割引、未回収リスクを負わなくて済むのはファクタリングになります。
    ファクタリング会社でも手数料をかなり低く設定している会社もあるので、条件が合えばファクタリングの方が利用しやすい可能性があります。
    手形割引とファクタリングは、どちらが良い取引、悪い取引ということはありませんので、自社の状況や取引内容によって選択していただくのが最適です。それぞれの取引の特徴を踏まえた上でご検討ください。

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